働き方をかたちにするオフィスデザイン|設計事務所と考える、会社を変えるレイアウトと素材
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働き方をかたちにするオフィスデザイン|設計事務所と考える、会社を変えるレイアウトと素材

会社の理念を可視化し、身体感覚を整える。生産性を支える「骨格」と「素材」の最適解 。
事務所の移転や改修は、単なるレイアウト変更や内装の刷新にとどめるには惜しい機会です。オフィスデザインは、机や什器の配置を整える作業ではなく、会社がどのように働き、どのような関係を築き、どのような価値を社会に示すべきかを空間として組み立てる行為だからです。
計画はまず、ゾーニング──すなわち活動内容に基づく大まかなエリア区分──から始まります。どこで集中し、どこで対話し、どこで来客を迎えるのか。その設計の「骨格」が定まってはじめて、動線と身体感覚を軸としたレイアウトが立ち上がります。最後に、素材の選定が空間の印象と身体感覚を具現化します。木材の温かみ、ガラスの透明性、石や金属の質感。色や光沢の選び方ひとつで、会社の価値観やブランドイメージは静かに伝わります。
働く場所の選択肢が広がる現在、「なぜこの場に集まるのか」という問いに、空間としてどう応えるか。その姿勢により、事務所づくりの質は大きく変わります。レイアウトや素材は単独の要素ではなく、会社の理念やブランディングと接続された設計プロセスの中で意味を持ちます。
本記事では、ゾーニング(エリア区分)からレイアウト、素材選定へと至る会社の設計プロセスを整理し、設計事務所とともに進めるオフィスデザインの要点を解説します。
レイアウトと素材を「経営の道具」として統合するオフィスデザイン
会社の理念を可視化するレイアウトと素材選定
オフィスデザインにおけるレイアウト(空間配置)と素材選定は、会社の理念や働き方、将来像を空間へと翻訳する設計プロセスです。
たとえば、オープンなワークエリアは、組織の公平性や対話重視の社風を、独立性の高い個室構成は専門性や機密性への配慮を体現します。
素材も同様に、木や石といった本物の自然素材は誠実さや質の高さを、ガラスや金属は革新性や透明性を印象づけ、会社の理念や価値観を来訪者と社員に伝えます。
さらに、可動什器や柔軟なゾーン構成は組織拡張や再編に対応し、耐久性や更新性を踏まえた素材選定は長期的な運用コストや環境負荷の抑制につながります。
理念を形にする設計プロセス
これらの要素を個別に扱うのではなく、会社の理念・事業構造・組織規模・立地条件を読み解きながら、レイアウトと素材へと統合していくことが、設計事務所に求められる役割です。
同じオープン構成の会社でも、都市型テナントと郊外型自社ビルでは、光環境や断面構成、外部との関係性は異なります。
社員の活動実態、将来の拡張性、環境負荷とコスト。
それらを横断し、その会社に最もふさわしい空間の骨格を構築します。
レイアウトと素材選定は、理念を可視化し、働き方を支え、変化に応答する手段です。
オフィスは完成品ではなく、組織とともに成熟する環境であると、私たちは考えています。
会社の部門連携を高めるエリア計画|アクティビティに基づくゾーニングの考え方
エリア間の連携を深めるゾーニング
オフィスデザインにおけるゾーニングとは、限られた空間を機能・用途・セキュリティに基づき区分し、配置する設計初期の重要な計画です。
パブリック(エントランス)、共有(会議室)、ワーク(執務エリア)などを整理し、動線とセキュリティを最適化します。
具体的には、
・来客用と社員用の明確な区分
・集中エリアと交流エリアの分離
・パブリック→共有→ワークという段階的構成による情報資産の保護
・社員動線と来客動線の分離による移動の効率化
・業務内容に応じた配置による生産性向上
・カウンターやラウンジなど「コミュニケーションハブ」を導入し、自然な対話を促す仕組みづくり
近年はエリアを固定し過ぎず、リモートワーク併用を前提に柔軟に運用できるゾーニングが求められています。
オフィスと外部を調停するバルコニー緑化
ゾーニングは室内だけでなく、外部とのつながりも重要です。バルコニー緑化は内外をつなぐバッファーとして機能し、オフィスを自然と接続された快適な環境へと拡張します。
・緑視率を高め、目の疲労を和らげ、ストレス軽減と集中力向上につなげる
・働く人の気分を明るくし、創造的思考や集中力を高める
・植栽が日射を遮り、窓際の体感温度を下げ、ヒートアイランド対策に寄与
・リフレッシュや打合せに活用し、社内コミュニケーションを活性化
・SDGsや健康経営へと取り組む姿勢を示し、取引先や採用活動にも好影響
オフィスデザインに植物や自然光を取り入れる「バイオフィリックデザイン」は、社員の心身の健康、生産性、会社のイメージ向上など、多くのメリットをもたらします。
設計精度を引き上げるオフィスデザイン|設計事務所と考えるレイアウト
エリアの働きやすさに差がつくレイアウト
オフィスデザインにおけるレイアウトは、ゾーニングで定めた事務所内のエリア区分を前提に、デスク、会議室、共有スペース、通路、収納などを業務内容や人数に応じ緻密に配置する設計作業です。
たとえば、島型配置ではローパーティションで視線を遮り、着座時は集中でき、立ち上がればチームが見渡せる高さを確保します。
集中作業ブースには遮音性の高いハイパーティション、部署間にはガラスやファブリック製ローパーティションを用い、視線の抜けとプライバシーを両立させます。
自然光は執務席へ引き込み、通路や収納は窓から離す。座席は窓に対し垂直に並べると眩しさが軽減できます。島配置はOAフロア(配線用二重床)の配線位置を念頭に、配線が露出しない距離検討が必要です。

視線と境界を整えるレイアウト
什器や間仕切りはエリア間の境界線となります。背の高い観葉植物やグリーンウォールを用いれば視線を遮り、集中できる空間が生まれます。
収納は壁際やエリア境界に低く配置すれば、空間を分断せず機能を満たします。キャスター付き什器やホワイトボードにより、小規模な打合せやプロジェクト変更に即応できる可動性(アジリティ)を確保します。
執務エリアからトイレや休憩室への動線上にハイテーブルやソファを置けば、部署を越えた偶発的な対話も生まれやすくなります。
素材で変わるオフィスデザイン|長く使える素材選びの基本
素材選びで会社の印象と働きやすさは変わる
素材は社員の生産性と会社のコンセプトやブランドカラー、そしてサステナビリティ(持続可能性)を色・質感・光沢で表現する重要な要素です。現代のオフィスデザインでは、耐久性やコストだけでなく、視覚‐触覚的な心地よさも重視されます。
木や石などの自然素材を多用するバイオフィリックデザインは知覚的なストレスを軽減し、集中力の持続性を高める一方で、ガラスやポリカーボネートなどの透光性素材は会社に見通しの良い印象を与えます。
吸音材やファブリックは集中エリアの音環境を整え、社員の生産性に貢献します。ソファ生地など柔らかく温かみある素材で、「家のような」心地よさを取り入れるのも有効な手法です。
長期運用を見据えた素材選び
執務エリアの素材選定には、初期コストだけでなく、耐久性やメンテナンス性(汚れにくさ、掃除しやすさ)を見据えた長期視点が不可欠です。再生材や認証木材、低VOC塗料などの採用は、環境配慮型の会社姿勢を社外にアピールし、社員の健全な就労環境の維持にも大きく貢献します。
安価な素材でも自然光や間接照明などとうまく組み合わせ、オフィス全体を柔らかい雰囲気に調整したり、洗練された空間を演出することは可能です。「社員が集まりたくなる会社」を空間化するうえで、素材選びはオフィスデザインにおける重要な設計判断です。
オフィスデザインの事例紹介
笹目の作業場

埼玉県戸田市の工業地域に位置する、空調設備会社のオフィスデザイン事例です。1階を倉庫・作業場、2階をメインの執務スペース、3階をリフレッシュ・ミーティングエリアと明確に区分した上で、スキップフロア(半階ずれた断面構成)を導入することで、各エリア間に上下階の気配が緩やかに伝わるレイアウトとなっています。
内部階段に面する位置には、透光性のあるポリカーボネート製の可動間仕切りを採用。気温変化や身体的ニーズに合わせて開閉すれば、空調負荷を軽減し、室内から見通す風景の変化を楽しめます。
外周部は木製方立で支持されたポリカーボネート複層板とペアガラスを併用し、場所ごとに異なる解像度の風景を生み出します。同時に素材の断熱性能により室内外の熱伝導を抑え、空調ロスを軽減しています。バルコニーには植栽を施した木製ルーバーを水平に配置し、夏の日射を遮熱しながら柔らかな光を内部へ導きます。昼間は緑と周辺の風景がぼんやりと内部に映り込み、逆に夜間は内部の活動がほのかに外部へにじみ出し、建築全体が穏やかな光の器として立ち上がります。
緑と光を組み合わせるバイオフィリックデザインにより、体感温度の抑制と心理的安定を実現し、建築の「性能」と「情緒」を高い次元で統合し、会社の次なる活動を支える環境装置としてのオフィスデザイン事例です。
【Q&A】事務所づくりとオフィス設計でよくある質問
Q1:ゾーニング・レイアウト・素材選定は、どのような関係にありますか?
A:
ゾーニングは業務やセキュリティに応じた大まかなエリア区分、レイアウトはそれに基づく視線・動線を考慮した具体的な什器配置、素材選定は空間に機能や意匠(色・質感・光沢)を与える仕上げ工程です。
三者は独立せず相互に影響し合います。たとえば遮音が必要な空間では、ゾーニング・レイアウト・素材を同時に検討します。統合的な判断が、質の高いオフィスデザインを生みます。
Q2:良いオフィスデザインは、どこで差が生まれますか?
A:
面積や予算ではなく「与件の読み取り精度」です。
事業構造や部署連携、将来の拡張性を整理し、それを空間へ翻訳する力。
この翻訳の精度が、完成後の使いやすさや組織文化の形成に直結します。
Q3:設計事務所と進める意義は何ですか?
A:
1. 理念の具現化:経営理念や働き方を空間に落とし込み、要素間の整合性を検証
2. 専門的統合:ゾーニング・レイアウト・素材・設備を、設計事務所の視点で横断的に設計
3. 長期視点:将来の働き方変化まで見据えた持続可能なオフィス提案
これらにより、コストパフォーマンスを最大化し、ブランド力を高める会社づくりが可能です。
【東京・渋谷】設計事務所選びとオフィス空間づくりに役立つコラム
オフィスデザインに素材とレイアウトを活かす|設計事務所PODA

田村 秀規 / HIDEKI TAMURA
| 代表 / 一級建築士
1990 法政大学工学部建築学科修了
B.E. in Architecture, Hosei University
1992 コロンビア大学大学院
建築・都市計画・歴史保存学部修士課程修了
Graduate School of Architecture,
Plannning and Preservation
Columbia University
1994 Reiser + Umemoto, RUR New York
94-98 Arakawa + Madeline Gins, New York
2003 PODA 開設
Established PODA
05-17 法政大学非常勤講師
Adjunct Lecturer, Hosei University
2002– 日本工学院専門学校 非常勤講師
Adjunct Lecturer, Nippon Engineering College
2011– 京都芸術大学 非常勤講師
Adjunct Lecturer, Kyoto University of the Arts
| OFFICE
PODA一級建築士事務所
東京都知事登録49321
開設: 2003年3月
PODA (Registered Office, Tokyo)
Established in March 2003
| ADDRESS
151-0051 東京都渋谷区
千駄ヶ谷1-2-1-403
1-2-1-403 Sendagaya
Shibuya-ku Tokyo 151-0051 Japan